

川添さんの視線は海外にも向いている。「インドのほうが、医療が足りないし、人件費も安いし、市場普及が早いかもしれない。ライセンシングビジネスを検討しています」
既得権者やことなかれ主義者によって日本の健診市場の変革が拒まれ続けるならば、ケアプロが示す新しいビジネスモデルは、他のアジアの国でいち早くスタンダードになってしまうかもしれない。「本当は、精密な機器、長生き、痩せた国民など、日本が有するプラスのイメージ(ブランディング)で世界に普及させたいのだけど」と川添さんは言う。
ケアプロはワンコイン健診サービスの事業者だけを目指してはいるわけではない。ケアプロの「プロ」とは、プロデュースの意味である。ケアプロは、「革新的なヘルスケアサービスをプロデュースして、健康的な社会を作っていく」ことをミッションにしている。超高齢社会において持続可能な健康・医療サービスを、ケアプロはどうプロデュースしていくのか、川添さんの着眼と突破力にこれからも注目したい。
2012年、ケアプロはワンコイン健診サービスに加えて、24時間型「訪問看護」という新事業を開始した。訪問看護は訪問介護と違い、医者の注射指示書により点滴などができる。厚生労働省は今後12,000程度の訪問看護事業者が必要としているが、現在は6000事業者ほどで、しかもそのほとんどが土日や夜間には営業をしていない。
「看取り難民」は2020年には30万人に達すると言われている。他方で資格があっても仕事に就いていない看護師が日本には50万人もいる。この社会課題に対し、川添さんは24時間、365日の訪問看護という新しいビジネスモデルで挑む。
ケアプロは現在、正規社員20人、非常勤30人の組織で、平均年齢は27歳と若い。社員には自ら起業したい人や社会課題を解決したい人が多く集まってくるという。大学生のインターンも5名程度受け入れており、その内容は週3日間で6ヵ月間以上の勤務という極めてハードなものだ。しかし彼らは大学を休学してまで、ケアプロのインターンにやって来る。
意欲ある若者が、自らリスクをとってまで、共感して集ってくる会社。この若く志を持った人材のフローこそが、この事業の正当性と将来性とを何よりも物語っているのではないか。