発進や再加速時にISG(モーター)がいい仕事をしていて、フラットなトルク特性のエンジンとあいまって、実に扱いやすい。

 直4エンジンで、トルコンATというのも筆者にとってはポイントが高い。この点は、運転好きには共感してもらえると思う。

 スポーツモードを選択するとATが3000rpm以上を積極的に使う制御になる。市街地には不向きだが、使いやすいパドルシフトとともに、走りを楽しみたい気分のときには歓迎できる。

 静粛性はハイレベル。パワートレーン系の音は多少車内に伝わってくるが、足元や風切り音など車外から侵入する音はよく抑えられている。後席に乗ってハッチバック車にありがちな後方から入ってくる音が、かなり小さいことにも感心した。おかげで同乗者と会話を楽しみながらドライブできる。

「2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー」の
10ベストカーに選ばれた実力は本物

 先進運転支援装備は、このクラスではこれ以上ないほど充実している。ブレーキホールドや全方位モニターも標準装備されていて、スズキコネクトにも対応している。4WDには冬道に対応するデバイスや走行モードが搭載されていることもプラスポイントである。

 最初にこのクルマの情報を知ったとき、「インドで生産するクルマをせっかくだから日本にも持ってきて売るんだな」程度の認識だった。だが実車に触れ、開発関係者から話を聞くうち、スズキの意気込みと戦略を理解した。

 フロンクスは、本気で日本市場を意識して作り込まれている。そしてコスパが抜群に高い。売れ筋カテゴリーにスズキが送り込んだ刺客は、実に魅力的だ。「2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー」の10ベストカーに選ばれた実力は本物である。

(CAR and DRIVER編集部 報告/岡本幸一郎 写真/横田康志朗)

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