初対面の人間と犬の絆が深まる
コミュニケーションの重要性

 脳波のシンクロは互いの共感性や協調性、社会的つながりが高まっていることを指し示すものです。一見、人と犬が仲良くしているように見えても、もし両者の脳波がバラバラであれば、実際には絆が深まっていないことを意味します。

 そこで研究チームは人と犬が交流しているときの脳波を測定する実験を行いました。対象となったのは、10匹のビーグル犬(1〜2歳、すべてオス)で、ランダムに人とペアを組ませて、双方に人と犬の交流中に脳の神経細胞から発される電気シグナルを測定できるキャップを着用してもらいました。

 そして、次の3つの条件下で人と犬の脳波を測定しました。

条件(1):別々の部屋にいて、社会的相互作用がない条件

条件(2):同じ部屋にいるが、社会的相互作用がない条件

条件(3):同じ部屋にいて、社会的相互作用もある条件

「社会的相互作用」とは、撫でたり、抱きしめたり、お互いの目をじっと見つめ合ったりするコミュニケーションのことを指します。

 なお、人と犬のペアは飼い主とペットの関係ではなく、お互いに見ず知らずの初対面という点が重要です。これは人と犬が親しくなるにつれて、脳波活動がどのように変化するかを調査する目的のためでした。

 実験は各回5分間に設定し、これを5日間続けて行いました。その結果、事前の予想通り、条件(1)(別々の部屋)では人と犬の脳波活動が最もバラバラで、条件(3)(同じ部屋+社会的相互作用あり)では、脳波のシンクロ率が最も高くなることがわかりました。

 さらに、日を追うごとに脳波のシンクロ率が高まり、条件(3)の「同じ部屋にいて社会的相互作用もある条件」では、実験開始から5日目に人と犬の脳波が高いレベルでシンクロしていたのです。これは、人と犬との絆が時間の経過とともに深まっていくことを示しています。

 人と犬との脳活動のシンクロが確認できたのは今回が初めてで、互いが脳波レベルで深い絆を結んでいることを示す結果となりました。