「愛犬との絆」は飼い主の思い込みではなかった!心拍と脳波で解明された犬と人との感情の“シンクロ”

「ウェルビーイング」は、1948年の世界保険機関(WHO)設立の際に考案された憲章で、初めて使われた言葉だ。「幸福で肉体的、精神的、社会的全てにおいて満たされた状態」をいう。新しい幸せの形として用いられ、最近さまざまな場面で耳にすることが多くなった。『ウェルビーイングの新潮流』第15回では、飼い主と愛犬の“絆”について考える。

飼い主が体調を崩したら
愛犬も具合が悪くなった

 先日、私が風邪をひいて体調を崩した時、一緒に生活している愛犬のトイプードルも同じタイミングで具合が悪くなりました。過去にも妻が体調を崩すと、愛犬も同じように具合が悪くなったことが何度かありました。

 物理的に考えると、私たち飼い主と愛犬は同じ生活環境で過ごしており、食事や散歩などの運動、就寝時間といった生活習慣が共有されていることが多いので、共通の生活環境や生活習慣が乱れることで、互いに健康に影響を及ぼし合う可能性はあります。

 しかし、わが家の愛犬とは物理的なことだけではなく、精神的にもシンクロ(同期)していると感じた経験が少なからずあります。

 例えば、私が落ち込んでいると慰めようとしてくれたり、具合が悪いと心配そうな表情をして隣に寄り添ってくれたりします。また、嬉しいことがあると一緒に嬉しそうにはしゃいでくれます。夜、仕事から帰宅すると、ほんの数時間しか離れていなかったのに、大騒ぎして飛び跳ねて迎えてくれる姿は本当に癒やされます。そしてその様子には愛犬との強い絆を感じます。

 しかし、これは私たち飼い主が犬とお互いに理解しあえているという一方的な思い込みかもしれないと考えることもあります。それは多くの飼い主が共通に感じていることでしょう。そんな飼い主と犬との絆が本当にあることを証明する結果が、2024年10月『Scientific Reports』に掲載されたフィンランド、ユヴァスキュラ大学の研究です。

 研究チームは、犬とその飼い主の絆を支える生理的メカニズムを解明すべく、両者の心拍変動とその時の行動を観察しました。その結果、犬と飼い主の心拍変動と活動レベルは互いに同期していることが判明したのです。