幸せもストレスも影響し合う
「愛情」で高まる人と犬のウェルビーイング

 犬は、1万5000年から 3万5000年以上前に登場し、人と共生を始めた最も古い家畜です。その長い共生の過程で人の感情を理解し、共感する能力を進化させてきました。人の感情に敏感であることが自分にとって有利であることを学び、飼い主の感情に寄り添うことで、より多くの食べ物や愛情を得られることを理解するようになったのです。

 有名な忠犬ハチ公のように、犬と人との強い関係性を示すエピソードは世界中に沢山あります。

 今回、奇しくも同じタイミングで発表された2つの研究は、人と犬との強い絆が実際に存在することを示すものです。これはつまり、人と犬、お互いのウェルビーイングが相互に影響し合うということです。

 飼い主のストレスは愛犬にも影響を与え、逆に愛犬のストレスも飼い主の健康状態や精神状態に影響を与えることが考えられます。飼い主が健康で幸せならば、愛犬も健康で幸せです。犬と人のウェルビーイングを高めるためには、お互いのことをよく理解しようとすることが重要です。

 犬にも感情があり、孤独や不安を感じることがあります。飼い主が犬に対して日々愛情を表現することが、犬の心の健康に大きな影響を与えます。犬もまた、愛情を感じることで安心し、飼い主への信頼が深めるのです。

 飼い主は犬の気持ちに敏感になり、犬の行動やしぐさからニーズを読み取ることが大切です。犬の気持ちに共感し、適切な対応をすることで、互いの関係がより良いものになります。愛情とケアをお互いに提供し合うことで、両者のウェルビーイングは自然に高まるのです。

 犬が人の気持ちを理解する理由は、優れた感情の察知と観察力、長年の進化、そしてしつけや日常の相互作用が関係しています。

 犬は人との深い絆を持ち、私たちの感情に寄り添う能力を進化させてきた特別な存在です。両者のウェルビーイングを考えるうえで、今回の2つの研究成果はこれからの人と犬の共生にとても大きな意味を持つものだといえるではないかと、私は思います。

(インテグレート代表取締役CEO 藤田康人)