平成後期から令和にかけては、IT化とグローバル化がさらに加速した。米国のITプラットフォーマーが急速に勢力を拡大するなかで、日本企業もIT知識やデータ分析スキルを備えた人材の採用を積極的に行った。

 また、起業家やベンチャーキャピタリストといった新たなエコシステムの構築者が注目を集め、柔軟な組織運営やイノベーションを起こす“起業マインド”を持つ人材が歓迎される時代へと移行した。さらにESG投資やSDGsへの関心が高まり、環境やDEI(多様性・公平性・包摂性)などの社会課題をビジネスに組み込むリーダーにも期待が寄せられている。

 とはいえ、大半のビジネス起業家や社会起業家は国内での活動にとどまり、世界的な規模にまでは発展させられずにいるのが現状である。

今最も旬なのは
「橋渡し人材」

 こうして振り返ると、日本社会で求められる経歴やスキルは、その時代を取り巻く経済・産業構造を色濃く反映してきたことがわかる。そして今、最も注目を浴びているのは、従来の枠組みや経歴に左右されず、複数の領域を横断して価値を創出できる人材である。

 デジタル化やグローバル化の進行に加え、環境問題や社会課題への対応が企業の重要テーマとなっている現状では、テクノロジーだけでなく、ビジネスと社会両面の視点を兼ね備えた人物が望まれている。

 AIやデータサイエンスなどを理解しながら、マーケティングや経営戦略といった経営系の知見も組み合わせる“領域融合型”の人材は、すでに多くの企業で重宝されている。IT業界だけでなく、製造やサービスの現場でも、デジタル技術と社会・市場ニーズを結ぶ橋渡しが必須だからだ。

 また、ジェンダーや国籍を含む多様性のある組織を率いるリーダーシップも重要視され始めている。顧客や投資家が企業の社会的責任を見極めようとするなか、ダイバーシティやESGを本質的にビジネスへ落とし込める視野の広さが不可欠となる。

 中でも、これらを総合し、“事業創造のエコシステムを構築できる人材“がとりわけ期待されている。大企業だけで新規事業を進めるのは困難が多いため、失敗を恐れない起業家精神を持ち、投資家やアクセラレーターといった周辺との連携、さらには異なる業種や文化を結びつける“橋渡し人材”が求められている。