米国ではトランプ氏が大統領に再任する。世界情勢が不透明さを増す中、石破茂首相はどうかじ取りをするのか。ジャーナリストの池上彰氏が石破首相に独占インタビューを行った。(内閣総理大臣 石破 茂、ジャーナリスト 池上 彰、構成/梶原麻衣子)
「石破首相はお疲れ」?
国民の疑問を直撃
池上 所信表明演説では、冒頭と末尾で石橋湛山の演説を引用されていたのに感じ入るとともに、驚きを覚えました。永田町では「超短命の石橋内閣にあやかるのは縁起が悪い」という声もあったようですが。
石破 石橋内閣は昭和31(1956)年12月から32(1957)年2月末までのわずか65日間しかなかったのですが、くしくも私はその間の昭和32(1957)年2月4日生まれなのです。しかも引用した石橋さんの施政方針演説がなされたのは私の誕生日でして。
池上 なるほど、そうだったのですか。
石破 因縁めいた話をするつもりではないのだけれど、一昨年には石橋湛山没後50年の節目で、石橋さんが設立した東洋経済新報社の創立70年でもあり、雑誌が私と保阪正康さん、船橋洋一さんの座談会を企画したんです。
そのときに石橋さんの本を結構読み返して違和感を覚えた部分はあったのだけれど、一方で「日本は身の丈に合った諸外国との友好関係を確立すべきだ」「商売も外交もお互いが与え合うものである」という分かりやすい言葉の中に真実があると感じました。
また石橋さんの路線は対米追従を嫌い、政治における言論の力の必要性を重んじてもいて感銘を受けたのです。
池上 石破首相が石橋湛山の演説を引いたのは、石橋内閣の後の岸内閣で日本の針路が大きく変わったのになぞらえて、石破内閣では安倍内閣とは違うやり方をしていくのだ、というアピールではないかと思ったのですが。
石破 いや、安倍(晋三)さんに対峙してということではなくて、石橋さんの考えの中に、確かに本来そういうものではないかと感じられるものがあったので、共感したということの方が大きかったのです。
池上 なるほど。ところで就任からしばらくたった頃、「首相はお疲れなのではないか」とする声が報じられていましたが、実際はどうなんですか。首相就任直後は、特にお疲れだった?