「睡眠時無呼吸症候群」患者の交通事故リスクに愕然とする…劇的改善の治療法とは?写真はイメージです Photo:PIXTA

睡眠時無呼吸症候群は自動車事故につながる? 

 世界保健機関(WHO)の報告によると、2010年以降、交通事故による死亡は5%減少しているとはいえ、2021年には年間119万人を数え、依然として世界的な課題となっている。

 閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)による睡眠障害は、高血圧、心臓病、糖尿病など多くの病気に関連していることが報告されているが、病気のほかに自動車事故との関連が加わるかもしれない。米トーマス・ジェファーソン大学シドニー・キンメル医科大学のElliott Sina氏らの最新の研究では、OSAを治療していない人は、自動車事故に巻き込まれる可能性が高いことが明らかになった。この研究結果は、「Otolaryngology-Head and Neck Surgery」に1月21日掲載された。

 OSAは睡眠中に何度も呼吸が止まり、熟睡が妨げられる病気だ。その原因は睡眠中に喉の筋肉が弛緩し、気道が閉塞されることにあるとされる。現在、OSAの治療法として一般的に行われているのが持続陽圧呼吸療法(CPAP)である。

 この治療では、鼻に装着したマスクから空気を送り込むことによって、気道を確保し、無呼吸が発生しないようにする。また、CPAP以外の治療選択肢として、気道をふさぐ組織を切除する(口蓋垂軟口蓋咽頭形成術)、舌の動きを制御する舌下神経に電気刺激を与える(舌下神経刺激)といった手術療法が挙げられる。

 Sina氏らの今回の研究では、CPAP療法を受けた患者(CPAP患者群;70万2189人)、手術を受けた患者(手術患者群;1万1578人)を含む283万4163人のOSAの患者データが後ろ向きに解析された。患者データは、病院システムや医師の診療所から匿名化された健康情報を収集する世界的な研究ネットワークである「TriNetX」より抽出した。患者の転帰評価は、救急外来の受診、入院、診療所受診につながった自動車事故の発生率とした。

 年齢、性別、BMIなどの傾向スコアをマッチングさせた後に、自動車事故の発生率を解析した結果、手術患者群で、CPAP患者群(6.072%)、無治療患者群(4.662%)よりも事故の発生率が低い(3.403%)ことが示された。