総予測2025#15Photo:PIXTA

2024年は大手企業の春闘賃上げ率が33年ぶりの高さとなった。しかし労働需給の指標を見ると、有効求人倍率には一見不可解な現象が起こっている。特集『総予測2025』の本稿でその要因を探り、25年の雇用・賃金の見通しを分析した。(法政大学経営大学院教授兼日本総研客員研究員 山田 久)

24年春闘は33年ぶり賃上げも
労働需給の指標に不可解な現象

山田 久やまだ・ひさし/法政大学経営大学院教授兼日本総研客員研究員 1963年生まれ。87年京都大学経済学部卒業、住友銀行(現三井住友銀行)入行。日本総合研究所副理事長などを経て現職。

 2025年の雇用・賃金動向を予想するに当たって、まずは24年の労働市場の状況を振り返っておこう。

 24年の動きで特筆すべきは、大手企業の春闘賃上げ率が5%台乗せの33年ぶりの高さとなったことである。

 連合(日本労働組合総連合会)傘下の中小企業では、大手には及ばないがそれでも4%台と久方ぶりの高さを記録した。

 この背景にあるのは、2%超のインフレ率が定着してきたことに加え、人手不足の深刻化が大きい。若年人口が継続的な減少傾向をたどる中、転職志向の高まりにより、大手企業が人材確保のアピールのために賃上げに率先して取り組んだという事情がある。

 しかし、労働需給の指標を見ると、不可解なことが起こっている。