翌年2013年には「ENJOY! 60秒サービス」といった、会計から商品提供までを60秒以内に完了させるキャンペーンを展開しましたが、これも「従業員がかわいそうだ」という批判を浴びました。

 そんな中、2014年と2015年に日本マクドナルドを揺るがす重大な出来事が相次ぎました。一つは2014年に発覚した消費期限切れ鶏肉問題、もう一つが2015年に報道されたチキンマックナゲットへの異物混入問題です。

 この連続した品質トラブルにより、日本マクドナルドへの顧客の信頼は失墜。業績は大幅に悪化し、経営基盤が揺らぐ危機に直面しました。

 この危機的状況の中で、日本マクドナルドはどのように復活を遂げたのでしょうか。

日本マクドナルドの大胆な「ポジション転換」は
なぜ成功したのか?

 日本マクドナルドが危機を乗り越えるために講じた施策は、多岐にわたります。

 まず、不採算店舗の閉鎖です。2015年には101店舗を閉店し、収益構造の改善を進めています。また、当時注目を集めたのが従業員の給与引き上げです。これは、人材のつなぎ留めや従業員の士気向上などの狙いもあったでしょう。

 そのほかにも、食の安全性や清潔感の確保、接客の改善といった基本的な取り組みを徹底しました。そして、一際大きなキーとなったのが、ポジショニングそのものの見直しです。

 ポジショニングとは、ターゲット顧客に対して自社の製品やサービスをどのように認識してもらうかを設計することを指します。顧客に選ばれるためには、競合他社との差別化を図り、独自の価値を効果的に伝えることが重要です。

 日本マクドナルドは危機からの脱却に向けて、そのポジショニングを大きく変える戦略をとったのです。