
2024年の経常収支黒字は過去最大となったが、サービス収支のうちのデジタル収支の赤字、旅行収支の黒字も過去最大となった。今後を見据えると、デジタル収支の赤字はさらに拡大し、旅行収支の黒字は頭打ちになる公算が大きい。見えてくるのはサービス収支の赤字10兆円超えの常態化である。(みずほ銀行チーフマーケット・エコノミスト 唐鎌大輔)
貿易ではなく投資で稼ぐ
「成熟した債権国」としての姿が定着
過去の本コラムでは日本の経常収支について「統計上の数字」に固執せずキャッシュフローからその実態をつかむ重要性や、近年赤字を拡大させている「その他サービス収支」、とりわけこれを主導しているデジタルサービスへの支払いに着目する重要性を議論してきた。
2月10日には2024年通年分の国際収支統計が明らかになったので、改めて日本経済の現状と展望を対外経済部門の視点から整理しておきたいと思う。
24年の経常収支は29兆2615億円の黒字と現行統計で比較可能な1985年以降で過去最大を記録した。これまで過去最大の黒字であった07年(24兆9490億円)を優に更新したことになる。
しかし、07年の経常黒字の半分以上(14兆1873億円)が貿易・サービス収支黒字であったのに対し、24年の経常黒字は第一次所得収支黒字(40兆2072億円)で全て稼いでいる(下図表参照)。
24年の貿易・サービス収支は過去3年間で最小とはいえ、歴史的に見れば大きな赤字水準(6兆5152億円の赤字)である。ちなみに、第一次所得収支黒字の40兆円台は初であり、もちろん過去最大である。
「貿易ではなく投資で稼ぐ」という「成熟した債権国」としての姿が一層鮮明になったといえるが、問題は国民がその恩恵に浴することができていないという現状である。
次ページでは、国際収支統計の現状からその実態を検証するとともに、サービス収益に焦点を当てて、今後を予測する。