保険大激変#28Photo by Shun Nakamaru

生命保険、損害保険、代理店を含む保険業界のDX(デジタルトランスフォーメーション)は、他の金融業界と比べて周回遅れだといわれる。今でも業務プロセスの中に、紙ベースの事務作業が多く残る。なぜ他業界に後れを取っているのか。特集『保険大激変』の#28では、現役の保険会社役員や保険ジャーナリストなど、システムやビジネスプロセス改革に詳しい識者5人に集まってもらい、その要因を議論してもらった。(構成/ダイヤモンド編集部副編集長 片田江康男)

生保・損保・代理店で
DXが“周回遅れ”の理由とは?

 銀行や証券各社のデジタル化の進捗を見ると、手続きのデジタル化と、スマートフォンのアプリケーションで完結できる金融取引が当たり前のように導入されており、今ではその使い勝手や非金融事業者との提携によるサービスメニューの充実度を競う段階に入っている。

 ところが生命保険と損害保険、保険代理店は、手続きは徐々にデジタルへ移行されているものの、依然として多くの部分で紙でのやりとりが残っている。そのため、各社の人員体制や業務プロセスは、紙による申請を処理することを前提に組み立てられたままだ。

 もっとも生保・損保には、デジタル化を遅らせる特有の障壁がある。まず挙げられるのは、商品内容が複雑で営業担当者の説明が不可欠だという点だ。それに、生保は日系大手であれば各社3万~5万人の営業職員を抱えており、また損保は一人で事業を営んでいる小規模の代理店にも販売を委託しているなど、関わる人や企業が多いために一気にデジタル化を進められない事情がある。

 そうはいっても、同じ金融業界の中でDX(デジタルトランスフォーメーション)が周回遅れの現状に、悠長なことは言っていられない。危機感を口にする経営幹部は多い。

 そこで、生保・損保・代理店の実務と各業界内でデジタル化に取り組む現役幹部、さらに保険実務に詳しいジャーナリストの5人に集まってもらい、保険業界でDXが遅れる原因と背景、解決策について話し合ってもらった。