ガイアックスが販売禁止になった要因の一つに、車両への影響が挙げられます。ガイアックスを使うことでアルミパーツやゴムパーツ、パッキンなどの腐食が発生しクルマに不具合を起こすことがある、と複数の自動車メーカーが報告したのです。メーカーは、ガイアックスの使用を控えるように呼びかけました。
01年の環境省調査後、03年の法改正では、ガソリンへのアルコール等の混合許容値は「エタノールは混合率3%まで、その他含酸素化合物は含酸素率1.3%まで」と決められました。その他含酸素化合物とは、アルコール類だと考えていいでしょう。0%としなかったのは、アルコール類がガソリンのノッキング防止剤として役立ち、ハイオクガソリンの添加物として使用される可能性があるからです。かくしてガイアックスは市場から姿を消しました。
その後、07年。日本政府は「エコ燃料実用化地域システム実証事業」を策定し、「E3ガソリン」(バイオエタノール3%混合ガソリン)の普及に向けて動き出します。
実は、米国ではE10ガソリン(バイオエタノール10%混合ガソリン)が普及しています。また、東南アジアのタイではそれまで基準ガソリンがE10だったものを、E20(同20%混合)に引き上げています。
片や、日本はかつてガイアックスを規制した際にエタノール配合率を3%に規制してしまったので、配合率を上げるにはまずは法改正が必要な状況です。
なお、今もごく一部ではE3ガソリンが売られているようです。そこで筆者は最近、某大手石油元売りのお客様相談係にたずねたところ、「現在は発売していない。バイオETBEを1%以上配合したものをバイオガソリンとして販売できるが、現在1%を超える製品はない」との回答でした。
かつての利害関係者の思惑が、今となって足かせになっているのは間違いありません。日本では現在、公道を走るための燃料として3%以上のエタノールや、その他含酸素化合物を1.3%以上含むガソリンは販売されていません。
なお、当時はまだ窒素酸化物吸着触媒などが普及する前でした。令和の技術で排ガス清浄化策を講じれば、ガイアックスはよりクリーンな排ガスとなるでしょう。
あのとき、世の中がガイアックスを責めるのではなく認め、新しいエネルギーに注目していたら……。日本の自動車社会、自動車産業の構造は大きく変わっていたに違いないと考えます。
