北京の団地にある「社区食堂」
肉まんと「豆腐脳」が約250円

 中国の最小の行政単位である「社区」には、主に高齢者に安価で食事を提供する「社区食堂」がある。筆者が住んでいる団地の社区にも以前はあったそうだが、今はない。しかし、社区の活動センターで朝食が提供されていると知り、利用してみた。

 肉まんと、「豆腐脳」という汲み出し豆腐の料理を注文した。同様の食事を一般的な店で注文したら、30元(約610円)近くするだろう。しかし、社区の活動センターでは12元(約250円)だった。肝心の味は、濃くなく、あっさりしていて、おじさんの部類に入る筆者の口にも合った。

「800円の肉炒め丼」も無料提供、中国で「思いやりレストラン」が広がる事情とは?社区の活動センターの朝食提供の様子 Photo by Y.Y.
「800円の肉炒め丼」も無料提供、中国で「思いやりレストラン」が広がる事情とは?豆腐脳や肉まんなど Photo by Y.Y.
「800円の肉炒め丼」も無料提供、中国で「思いやりレストラン」が広がる事情とは?肉まんはあっさりしていて口に合った Photo by Y.Y.

 何か文献はないかと、中国政府による「中央1号文書」(主に農業について記述)を読んでみた。すると、公共食堂について、「減油、減塩、減糖、全粒穀物などの食事を普及させる」と書いてある。筆者が味わった朝食もまさに、そのような味付けだった。公共食堂に触れているのは、中国政府が重視していることを示している。

 しかし民間の愛心レストランが増えている背景には、弱者救済のためのセーフティーネットの整備が遅れていることは否定できない。改革開放以降、中国は市場競争を活性化させる政策を実行してきた。その結果、貧富の差が付き、格差是正が中国政府の大きな課題となっている。

 中国共産党第18期中央委員会第5回全体会議では、「革新、緑色、開放、協調、共享」という新たな発展理念を出した。「共享」の理念は、弱者救済に関するものだ。団地の社区食堂は、まさに中国政府の弱者救済を体現している。