そこで私は、子どもの時から化石が大好きで趣味で化石掘りに出かけていること、その延長で生物の進化にも興味があり、地球上で長く繁栄している種には多様性があることを孫さんに話しました。
例えば、昆虫は非常に種類が多くておよそ100万種いること、それは地球上の生物の種類の半分以上を占めること、地球上の生物の個体数では昆虫が90%以上を占めること......。
すると突然、孫さんが「そうなんだよ!」と叫んで、和室から出てデスクの受話器を取り、「今すぐ社長室に来い」と誰かを呼び出しました。飛んで来たのは、当時の人事部長。そして「今すぐ入社手続きをしろ」と言われたのですが、さすがにその場では手続きできず、いったん帰宅しました。
今でも、我ながら何てマニアックな話をしたんだろうとか、孫さんってやっぱり面白い人だなあと思い返します。きっと孫さんには「多様性」あたりが響いたのでしょう。これは私の経験談ですが、実は他にも孫さんに直接採用された人に共通する点があるのです。
トップが抱える課題に対して
解決策をその場で出せること
それは、「孫正義の抱える課題に対して、解決策をその場で出せること」です。当時、入社した他の人は、その時の孫さんの課題を解決するために一緒に仕事をしていた人がほとんどでした。それは、取引先や業務委託先の人だったケースもあります。
有名な例で言えば、ソフトバンクの成長期にCFO(最高財務責任者)を務めた北尾吉孝氏(SBIホールディングス代表取締役会長兼社長)は元々、野村證券でソフトバンクを担当していました。そして、北尾氏の次にCFOになった笠井和彦氏はソフトバンクのメインバンクである富士銀行(現みずほ銀行)の副頭取だった人物です。
また、ソフトバンク専務執行役員兼CHRO(最高人事責任者)の青野史寛氏も、前職のリクルートにて、ソフトバンクの新卒3000人採用・育成プロジェクトを手伝った縁から転じたパターンです。