浮かれた時代にイカれた連中が登場
そんな浮かれた時代に、イカれた連中が登場します。正確にいえばそれ以前から存在していたのですが、首都高湾岸線が大黒まで延びたことで一気に注目の的となりました。
そのイカれた連中とは、通称「湾岸ランナー」。千葉の市川PAからスタートし大黒PAまで、首都高湾岸線で最高速度を競い合う連中です。彼らがゴールの大黒PAにたまると、その様子を見ようと外野も集まり始めたのです。
こうして大黒PAにクルマ好きが集まるベースができあがりました。湾岸ランナーのクルマの特徴は、シャコタンにしてマフラーやタイヤを変更した改造車やドレスアップ車、音圧マシン(爆音オーディオ車)。最近だと「痛車」(アニメやゲームなどのキャラクターをラッピングしたクルマ)も集合するようになりました。
クルマ好きといっても、代官山モーニングクルーズ(毎月第2日曜日に東京・代官山T-SITEにテーマに沿ったクルマが集まるイベント)や外苑前のイチョウ並木に集まるクルマとは、明らかに違います。

大黒PAは一種のカルチャーになり、人気漫画『湾岸ミッドナイト』やヒット映画『ワイルド・スピード』の舞台としても登場。世界中にその存在を知られるようになりました。集まるクルマは、どうも警察が好きなタイプのクルマではないので、当然ながら取り締まりは厳しくなっています。週末の夜間にPAを閉鎖して使えないようにしたり、改造車の一斉取り締まりをしたり……。
最近では、インバウンドが殺到しているとニュースになりました。でも考えてみてください。自分がクルマ好きで、「クルマ好きの聖地」が外国にあって、その国を訪れたらそこに行きたくなるのは仕方ない、と思うのです。
もし、モナコに行ったらF1のコースで有名なトンネルや、ローズホテル前のヘアピンカーブを見てみたいと思うでしょう。日本の場合は、それが本来一般車も休憩目的で使う大黒PAになってしまったのが実態です。漫画や映画作品の聖地巡礼スポットでもあります。