まだまだ知られていない人たちが声を発していく
Voicyがめざすのは「声の図書館」
編集 Voicyのパーソナリティは、誰でもなれるわけではないのでしょうか。
緒方 Voicyを起業したとき、「話せる人はかっこいい」「Voicyのパーソナリティはイケてる」と、話し手がリスペクトされるような状況を日本に実装しなければならないと思ったので、審査してパーソナリティを集めることにしたんです。

田中 ある程度のレベルを担保することで、「話す」ことの価値を高めようと。
緒方 今、世の中で人気の話し手は、声も文章も顔も生活もさらけ出し、炎上してもそれを物ともしないメンタルのたくましさまで持ち合わせている人たちが中心です。そういう人しか発信できていない。
でも、「顔は出したくないけれど、発信したい」と思っている人は潜在的にかなりいるはずです。ですので、本来は「声の世界」が圧倒的に伸びてもいいはずなんです。
田中 Voicyを通して「話す」ことの価値が広がり、もっともっと多くの人が音声プラットフォームにプレーヤーとして参入するようになる。そこをめざしているのでしょうか。
緒方 そうですね。とにかく発信者が増えてほしいですね。
まだまだ知られていないだけで、素敵なことを考えている人や、豊かに自由に生きている人は、大勢います。それこそ、動画配信をしている人たちよりはるかに多いはずですが、そのほとんどが発信活動をしていません。
日本一のソムリエが何を考えているのか、マグロ漁船に乗っているおじさんはどういう思いでやっているのか、営業でトップセールスの人はどういうマインドセットなのか――。有名人でなくても、こうした人たちが「声だけならいいかな」と、発信してくださり、そしていずれ「声の図書館」ができてくる。それが、Voicyがめざしているところでもあります。
毎日話しているはずなのに
発信には抵抗を感じてしまう
緒方 今や誰でも、ブログやSNSで情報を発信できる時代になり、文章や動画での発信はかなり大衆化しています。
でも、声での発信はまだまだ抵抗があり、大衆化はしていません。これは、「中身がある話はできないし……」「声の発信は、声がきれいな人でないと……」という意識がまだかなり強いためです。

田中 声で発信してみたいけれど、話す自信がないとか、人前で話すのが苦手とか、そういう人は、ビジネスパーソンでも案外多いと思います。
緒方 歯がゆいですよね。「指定された文字数の文章を書くのが苦手」というならわかるんですよ。でも、話すことに関しては、「みんな、毎日普通にしゃべってるやん」って(笑)。それをそのまま話せばいいんですよ。
編集 炎上リスクを考えてしまうのでしょうか。
緒方 文字や動画と違って、声の場合は、最初の時点で、「あ、合わないな」と、最後まで聞かずに離脱してしまいます。
編集 なるほど。文章ですと、本文を読まずにタイトルや見出しだけ見て批判的なコメントを書く、ということはよく起こりますが、声の場合は、そもそも最初に離脱してしまう。最後まで残って聞いてくれるのは好意的な人だけのため、炎上が起こりにくく、また、コミュニティを育てやすいのですね。
田中 Voicyのリスナーのみなさんは、ある種の多様性に対する受容性みたいなものが底上げされている感じがありますね。リテラシーが高いというか、炎上みたいなことはほとんどないように思います。パーソナリティとして感じるのは、これも「声」の力なのかな、と。