また、外国人視点で日本の良さを発見するTV番組、その火付け役となった「YOUは何しに日本へ?」(テレビ東京)は2013年が放送開始である。こうした経緯を経て日本の良さが広く再認識・再自覚され、もはやイデオロギーとなっていった。

 だから、先日ある外国人がSNSで日本を褒める際に「日本は本当に美しい国。その幸運に感謝すべき」という言い回しをしたとき、結構多くの日本人がそれに対して怒っていた。「これは単なる降って湧いた幸運ではなく、ひとりひとりの努力と節制によって得たもの」というわけである。

 その外国人にどれほどの意図があったのかは知れないが(幸運を喜ぶ「Thanks God」という言葉もあるくらい言語と文化の土壌が違うから、日本人の努力をないがしろにする意図はもしかしたらなかったかもしれない)、その言葉に対して一致団結して怒れるほど、日本人は自分たちの美徳を自分たちのものとしてシェアできていることがうかがわれた。

 そうした日本人による日本愛を、わかりやすい形で踏みにじりがちなのが外国人観光客……というわけである。

歴史上かつてないほど
「日本人」を意識させられる日本人たち

 幸運、といえば、日本が島国で外国からの影響を良くも悪くも地政学的に受けにくい環境にあったことは、今日の日本が形成される上でたしかに「幸運」であったに違いない。

 しかしその環境があったために日本人は外国というものをあまりリアルにイメージしてこられなかった。地続きの国境を挟んで隣国とバチバチに緊張してきた諸外国に比べれば、日本は当然ながらその点においては圧倒的に経験が乏しい。

 放っておいても海が四方を囲っているので、何も意識せずともおのずと日本人であり、その状態が自然すぎて、日常生活の中ではもはや「日本人である」と自覚する機会すらほぼなかった。

 しかし近年のグローバル化に加えて、移民政策とインバウンドで日本国内にたくさんの外国人が入ってきて、戦時を除いて史上最もといって過言でないくらい日本人はナショナリティーを強く意識させられている。そのとき「日本人と『それ以外の国の人』」の意識は強まるし、その差異に敏感である。

 ちなみにだが、だから日本人は「それ以外の国の人」を前にいまだかつてないくらい団結を強めているフシもある。

 これらが、相まって今日のインバウンド不信を醸成している。

 なお、「日本で潤沢にお金を使う訪日観光客に日本人は嫉妬しているのでは」という記事が英国の経済誌「FINANCIAL TIMES」(※)から出た際、日本人の多くはブーイングを寄せていて、「嫉妬とかではなく、マナー悪い振る舞いが単純にイヤ」という主張であった。※英紙「日本人がオーバーツーリズムを嘆くのは訪日観光客が妬ましいから」(2024年8月25日)