宗教的な確信に近いトランプ関税の理屈、石破政権が描く国難パッケージとは2月に行われた日米首脳会談。米大統領のドナルド・トランプと面識のある稀有な首脳となった首相の石破茂は、トランプ関税の発動を受け、トランプと早期に電話会談を行うと表明 Photo:JIJI

「1兆2000億ドル(約170兆円)に及ぶ貿易赤字はわれわれ(米国)の生活を脅かす国家非常事態に当たる」

 4月2日(日本時間3日)、米大統領のドナルド・トランプはホワイトハウスでの記者会見で、世界からの全輸入品に課す相互関税の導入を発表した。日本に課す追加関税は24%。予想されたとはいえ、国際社会全体に与えた衝撃は大きい。トランプによる「政治的経済有事」といっていい。

 中国は直ちに報復関税の発動を発表した。国内総生産(GDP)で世界1位と2位の経済大国同士の貿易戦争の勃発に金融市場は激しく動揺した。世界同時株安を誘発、反トランプデモは全米に広がった。

 しかし、トランプは意に介することなく強気の姿勢を貫く。SNSに「私の政策は決して変わらない」と投稿した。発表を受けて首相の石破茂は直ちに関係閣僚会議を招集した。

「極めて不本意であり残念。政府、与党一丸となり、国民の生活、雇用、産業を必ず守り抜く」

 その一方、自民党幹事長の森山裕は石破に与野党党首会談の開催を進言した。4日に開かれた党首会談で石破はトランプ関税について「国難」との認識を示した。その上で「超党派で対応する必要がある」と協力を呼び掛けた。

 野党党首5人の中にはれいわ新選組代表の山本太郎も出席しており、「国難」に名を借りた野党対策の思惑も透けて見えた。石破を巡っては10万円の商品券配布問題や内閣支持率の急落もあって「石破降ろし」が現実味を帯びていた。トランプ関税はその局面を転換させるきっかけになる可能性がある。過去にも、2011年の東日本大震災は、退陣の流れにあった当時の首相、菅直人の“延命”につながった。今年は東京都議選、参院選が控える選挙の年。そのタイミングでのトランプ関税の発動に自民党幹部は「首相にとってむしろチャンスだ」と語る。それは野党だけでなく党内の「石破降ろし」を封じる効果としても見逃せない。