
手探りの日米交渉が始まった。相手は変幻自在、狂瀾怒濤の手法で国際社会を翻弄し続ける米大統領、ドナルド・トランプ。日本への追加関税など相互関税を発表したかと思えば、対抗措置を取らなかった国には90日間の交渉期間を与えるとの方針転換を明らかにした。ただし、中国に対してはエスカレートを続け、ついに関税は145%というあり得ない数字に跳ね上がった。中国も報復関税を発表、米中貿易戦争はただならぬ局面に突入した。
この間に首相の石破茂はトランプとの直接対話に乗り出した。トランプの真意、目的を探るためだった。意外に早いタイミングでトランプとの電話会談が設定された。2月の日米首脳会談をお膳立てしたメンバーが機能した。国家安全保障局長の岡野正敬、外務事務次官の船越健裕、駐米大使の山田重夫、さらに前国家安全保障局長の秋葉剛男も側面から支援した。
会談は4月7日午後9時(米東部時間は午前8時)から始まった。石破側近によると、トランプは前日の日曜日まで3日連続でゴルフ三昧だったという。
「週初めの月曜日の朝は誰でも機嫌はよくないものだ」(石破側近)
そのせいもあってか石破との応答は約30分間という短時間に終わった。ただしトランプの思惑の一端が伝わってきた。石破が日米間の交渉窓口を決めることを提案したのに対してトランプが即答したからだ。
「財務長官のベッセントに決めている」
相互関税の発表と同時にトランプはディール(取引)を行うことも織り込み済みだったことをうかがわせた。ところが、この時点で石破は交渉役を誰にするのかを決めていなかった。