
ドナルド・トランプ米大統領は9日、米テクノロジー企業の株価を急落させていた厳しい関税を一時停止し、業界に救いの手を差し伸べたように見えた。
しかし、安心するのはまだ早い。
貿易障壁をめぐる不確実性は依然として米IT大手と世界経済を揺るがしている。短期的に振り子がどちらに振れようとも、これは人工知能(AI)ブームの足かせになる可能性が高い。
AIの成長は米テック大手の投資に大きく支えられてきた。シティグループの推計によると、マイクロソフト、メタ・プラットフォームズ、グーグル親会社のアルファベット、アマゾン・ドット・コムの4社は今年、データセンター向けとして合計で2700億ドル(約40兆円)を超える設備投資を計画している。
テック大手はAIブームの中核をなすエヌビディア製半導体に多額の資金を投じてきた。これによりエヌビディアの株価は数日前までは異例の高水準に達していた。同社は一時、時価総額で世界最大の上場企業となった。
AIブームが持続するかどうかは、リセッション(景気後退)の可能性が高まる中で、テック企業が将来的にも投資を維持できるかどうかにかかっている。
だがそれを求めるのは酷であり、おそらく無理がある。
テック大手に巨額の収益をもたらしている事業の中には、不況に強いとは言えないものもある。メタの収入源はほとんどが広告関連であり、この分野は関税引き上げによる物価上昇で消費が抑制されれば脅威にさらされる可能性がある。グーグルも広告に依存しており、昨年の売上高の約4分の3は広告によるものだった。