【寄稿】90日間の関税停止という技Photo:Chip Somodevilla/gettyimages

 ドナルド・トランプ米大統領が9日、大半の国に対して相互関税の適用を90日間停止すると発表したとき、常識が勝利した。トランプ氏がディールメーカーになると決意したのは、米国と自分自身の政治的立場にとって良いことだ。トランプ氏が多くの機会を手に入れたのは間違いない。同氏は7日、関税引き上げの結果「非常に多くの国が(中略)ディールの交渉にやってくる」と記者団に語ったとき、そうした機会の活用を望んでいるように聞こえた。スコット・ベッセント米財務長官は8日、一部の非常に大きな国々がしっかりした提案を携えて交渉のテーブルに急いで着くだろうと述べ、トランプ氏に同調した。

「タリフマン(関税男)」を自称するトランプ氏は、世界貿易のバランスを取り戻したいと考えている。彼はなぜ、相互に関税を削減し、非関税障壁を撤廃することによって、それを実現すべきなのだろうか。貿易の増加はとりわけ米国にとって、より良いことだという事実から説明しよう。

 米国の国内市場規模は十分ではない。世界人口に占める米国人の割合は4%強だ。米国の潜在的な顧客の96%近くは米国外の居住者だ。国際通貨基金(IMF)によると、米国の国内総生産(GDP)は世界全体の27%という大きな割合を占めるが、それでも世界経済の大半は米国外が占めるということだ。米国が繫栄した国であり続けるためには、世界の他の国々を締め出すわけにはいかない。

 商品やサービスを輸出する企業で働く米国人は、国内のサプライヤーと同様、このことを理解している。農業や農業関連産業に従事している人々も同様だ。米国の農家や牧場主は皆、世界市場への販売が生計を立てる上で極めて重要なことを知っている。