
名門エスカレーター校であっても、稼ぎを出せなければ、質の良い一貫教育を続けられなくなる。エスカレーター校を運営する233学校法人のうち、企業でいう売上高経常利益率に相当する「経常収支差額比率」がプラス、つまり黒字になっているのは126学校法人に限られる(2023年度実績)。特集『エスカレーター校の経営偏差値』の#10では、稼げるエスカレーター校ランキングを作成するとともに、黒字を出す学校法人の共通点を明らかにした。(ダイヤモンド編集部副編集長 臼井真粧美)
MARCHよりも稼ぐ力を持つ
奈良、静岡、京都の学校
幼稚園から大学、大学院までを首都圏で展開する学校法人川村学園は5月23日、川村学園女子大学の文学部国際英語学科、および生活創造学部(生活文化学科、観光文化学科)について、2026年度以降の学生募集を停止することを発表した。教育学部についてはすでに、25年度以降の募集を停止しており、存続する学部学科は、文学部の3学科(史学科、心理学科、日本文化学科)のみとなった。
川村学園はダイヤモンド編集部が作成した稼げないエスカレーター校ランキングでワースト上位にランクインしていた(本特集#9『【稼げないエスカレーター校ランキング】甲子園学院、川村学園…「赤字経営の学校」に共通する最大の課題とは?』参照)。今回、経営改善の道へもう一歩、踏み込む決断をしたわけだ。
大学が消滅する、学校法人ごと立ち行かなくなるといったことがこれからどんどん起こるはずだ。この学校淘汰時代、学校関係者はもちろん、受験生やその家族も受験校選びで経営について目を向ける必要がある。そこでダイヤモンド編集部では、エスカレーター校を運営する全国233学校法人の「経営偏差値」を初算出した(本特集#1~#8参照)。経営偏差値は、「稼ぎの規模」「稼ぐ力」「財務健全性」の三つを測る財務数値(23年度実績)を偏差値化し、この三つの偏差値を平均したものを総合の経営偏差値としている。
このうち「稼ぐ力」は、企業でいう売上高経常利益率に相当する「経常収支差額比率」で測った。経常収支差額比率は、企業でいう経常利益に当たる「経常収支差額」(経常収入-経常支出)の「経常収入」(教育活動収入+教育活動外収入)に対する割合だ。
学校が良い教育や研究を続けるには、利益を出して資金を継続的に生み出していかなければならない。では稼げる学校法人はどこなのか。
黒字の学校法人について経常収支差額比率のベストランキングを作成すると、受験人口が多い東京で人気の高い難関私立大学を擁するMARCH(明治大学、青山学院大学、立教大学、中央大学、法政大学)の学校法人は全てトップ50に入り、青山学院は4位、法政大学は7位となった。
次ページでは、稼げる順に並べたランキングでベスト126位までを掲載する。併せて、黒字を出せる学校法人の共通点をデータに基づいて明らかにする。トップ3はMARCHでもなく、東京拠点でもない。奈良、静岡、京都の学校法人だ。