DXは技術の導入ではなく、ビジネスモデルの変革そのもの。デジタル人材はビジネス部門の中で意思決定に関与し、事業成長のための戦略策定に直接関わるべきです。IT部門に置かれたままでは、ビジネスサイドとの距離が生まれ、変革の取り組みが断片的なものになりがちです。マッキンゼーの調査結果を踏まえれば、デジタル人材をビジネス部門に統合することで、よりスピーディで実効性のあるDX推進が可能になることは明らかです。
この考え方は、新規プロダクト事業の開発にも応用できます。新規事業では既存の業務プロセスとは異なる視点やアプローチが求められます。そこでデジタル人材と同様、新規事業の専門人材を独立した部門に閉じ込めるのではなく、直接ビジネス部門に統合することで、より実践的な価値創出が可能になります。ビジネス部門と密接に連携しながら開発を進めることで、プロダクト開発の方向性が市場のニーズに即したものになり、スピーディな事業展開が可能になるでしょう。
「第3の選択肢」オープンイノベーションは
機能しているか
新規事業推進のために出島戦略や統合戦略を採用するほかに、外部の技術や知見を活用しようとする企業も多く、オープンイノベーションは「第3の選択肢」として注目されています。スタートアップや外部企業との連携を通じて新規事業の推進力を高める、このアプローチには近年、多くの期待が寄せられ、CVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)の設立によるスタートアップへの投資やアクセラレーター制度の導入で、社外の技術やノウハウを積極的に取り入れようという動きが活発です。
しかし、オープンイノベーションもまた「ごっこ」で終わるケースが少なくありません。スタートアップとの提携を発表したものの、実際には本業への統合が進まず、形だけのコラボレーションになってしまう事例は多発しています。スタートアップとの契約を結んでも具体的な導入や実装に進まず、発表だけで終わってしまうことも珍しくありません。既存の事業部門が外部の技術をどのように活用すべきか分からず、結果として実際の運用が進まない状況に陥ることもあります。
大企業側の「合意形成の遅さ」や「リスク回避志向」が、せっかくのアイデアが実現しない原因となることもあります。スピード感を重視するスタートアップに対し、大企業の意思決定プロセスは遅く、結果として市場投入のタイミングを逃すこともあります。加えて、既存の事業部門はリスクを回避する傾向が強く、新しい技術やアプローチに対して慎重になりすぎて試行すら進まないことがあります。