参院選にも直結するトランプ関税の交渉で円高進む、プラザ合意の再現はあるのか米大統領のドナルド・トランプ(右)と会談した経済再生担当相の赤澤亮正[内閣官房のSNSより] Photo:JIJI

「まだ何も見えてこない」――。米大統領のトランプとの会談を終えて帰国した経済再生担当相、赤澤亮正の報告を受けた首相の石破茂は周辺にこう漏らした。トランプの狙い、具体的な交渉のスケジュール感はなお不明のままというのだ。トランプは石破も聞かされた同じ話を赤澤にもしたようだ。

「米国は寛大な国で世界から物を買い、軍隊を派遣して世界を守ってきた。その結果、米国は衰退した」

 これがトランプの心象風景と言いっていい。これについて米国との通商交渉を経験した自民党の閣僚経験者は「40年前と全く変わらない」と語る。米国は交渉となると、ひたすら同じ主張を繰り返して相手国の譲歩を引き出すことを狙うからだ。そこにトランプ独特の予測不能の要素が加わる。

 今回も突然、赤澤をホワイトハウスに招き入れ、トレードマークの真っ赤なサイン入りの「トランプ・キャップ」をプレゼントするなど型破りのパフォーマンスを見せた。このトランプの“お出まし”について石破は二つの狙いがあったとみている。

「俺はこんなに日本を大切にしているんだ」

「最後は俺が決めるんだ」

 自動車へのこだわりも一貫している。その原点はトランプが2019年5月、令和の時代になって初めての国賓として来日した時ときにある。大統領専用車の窓越しに見た東京の街の光景を石破との電話会談でも繰り返した。

「米国車が1台も走っていなかった」

 確かに米国車の日本国内でのシェアは0.4%、これに対して米国内に占める日本車は40%に達する。日米貿易摩擦が常態化した1980年代には日本車が目の敵にされ、ハンマーでたたき壊される映像がしばしば流された。それでも当時は自民党副総裁の二階堂進のように米フォードのリンカーンコンチネンタルに乗り続けた政治家がいたが、今や皆無に近い。車体は大きい、燃費が悪く、販売店が少ないとなれば米国車が売れるはずがない。