だが、下会長・小木曽社長体制に移行して1年もたたない22年3月に、エンジン認証不正が明るみに出た。しかも、不正が2000年代初頭から続いていたこともあって、日野自への対応とその位置付けが改めて問われる状況となった。
そもそも、日野自の不正による業績悪化と財務悪化だけでなく、商用車と乗用車では市場や商品の性質が異なることに加えて、商用車は乗用車以上にCASE対応のための莫大な投資が迫られており、個別での生き残りは難しいという状況もあった。
日野自と三菱ふそうの統合を発表した23年5月の記者会見で、トヨタの佐藤恒治社長は「われわれが日野を支えることへの限界も正直ある」と本音を明かしていたこともある。それ故、最終的にはトヨタは、日野自の単独再建ではなく、他社との連携によって商用車部門全体の最適化を図ろうとしたのだ。
商用車のCASE技術は、電動化(EVとFCV)、自動運転、コネクテッドなど多様なものが求められており、世界的な競争が激化していくとみられている。日野自は、下前社長時代に世界第3位のトレイトンと提携していたが、トヨタはこのトレイトンのライバルである世界第2位のダイムラートラックと連携することを選んだ。トヨタ・ダイムラーと日野自・三菱ふそうの連携により、CASE技術革新への投資合理化やスケールメリットを追うことで勝ち残りを目指すことになる。
なお、日野自の経営統合相手となる三菱ふそうは、本来、三菱自動車工業のトラック・バス部門だったが、03年に「三菱ふそうトラック・バス」として独立し、その後05年からダイムラーの完全子会社となった(現在、ダイムラートラックが89.29%出資)。また、ダイムラートラックは、19年11月に独ダイムラーAGの商用車子会社として分離独立している。
日本ではダイムラーといえばメルセデス・ベンツの乗用車のイメージだが、ダイムラートラックは、世界でもトップクラスのトラックメーカーだ。