「心・技・体のうち最も大切なものは?」
という質問に対する意外な答え
私が必ず聞く質問がひとつあります。
それは、「心・技・体――この3つのうちどれがあなたにとって大切ですか」という質問です。研修医のみなさんはじっと考えてから、「私は外科に進みますので、技だと思います」「精神科を目指しているので心です」などと答えます。「3つのうちどれが」と聞くと、「どれか」になってしまうのですね。
しかし、正解は「3つとも大切」なのです。
実はこれは弓道を学ぶ人にとって欠かせない「弓道教本」の一番最初に書いてあること。弓道では「心技体をもって良しとする」、つまり心と技術と体の3つが整わないと弓道がきちんとできないという考え方なのです。私は弓道の経験を通してこの言葉を知り、仕事でもこの3つが必要だと考えました。
精神科なら「心だけ」ではなく、病んでいる人を見抜く目(技)が必要ですし、体力もないと続きません。それは医師業だけでなく、どの業界に置き換えて考えてもそうではないでしょうか。けれども最近は「技」だけが重視される傾向があると感じます。
つまり仕事では常に「心・技・体」の3つが大切なのです。ですから面接でそう答えてもらったら満点をつけます。けれどもこれまで「心と技の二つが大切」と言った人はいたものの、「すべて」と答えた人はいません。この質問に対する満点回答は、ゼロ人です。
ただしその質問とともに、面接では心、その人の“仕事に対する情熱がどれだけあるか”も見るようにします。ですから面接を受ける方にアドバイスするとしたら、自分の本質を表に出すということ。人の本質とは、情熱です。「どうしてもここで仕事をしたい」という思いです。それには平坦な口調ではダメですよ。「本当にここで仕事をしたいんです」と訴えるときに、“本当に”に力点を置くなど工夫してください。
しかし、そもそも「そんなに情熱を持てるもてる会社が見つからない」という声も聞こえてきそうですね。