円安による暴落の可能性
このように投資家側の姿勢が変わりつつあるときに、ファンダメンタルズの大きな変化が重なるとなにが起こるか。
たとえば、大幅な円安、かつ、円安トレンドの定着、そして期待インフレ率や名目金利の上昇が起こったら?さらに、日銀の大幅な政策変更もあり得る。
仮に、ヘッジファンドが買いを仕掛けて金利が大きく低下すると同時に、円安の急激な進行に期待が高まったときなどが、もっとも危険だ。この場合、超長期の日本国債を売って利益を確定させ、米国債などに資金を移すインセンティブが強まる。もしそんな展開になれば、生保は投資収益をの最大化をはかる第1の投資家的行動をとるだろう。そのときが、超長期国債市場のピークとなる。生保が動けば、ヘッジファンドの超長期国債への参入が加速し、さらには年金の一部や農林中金といったもともとの第1の投資家たちがこれに呼応して動くだろう。すると、大きく価格が上昇する可能性もあれば、逆に暴落が起きる可能性も出てくる。
このほか、日銀が積極的な金融緩和を実施して大幅な金利低下が起きた場合、とりわけ日銀が長期国債を大量に買うことになった場合も暴落が起こりうる。つまり、長期運用目的の投資家が日銀の買い入れにより押し出されて10年物国債市場から超長期国債市場へ大量に流入してきた場合、同様に、市場は投資収益の最大化を狙う投資家に支配されるだろう。こうした状況下で同時に円安が進み、さらなる円安トレンドが定着すれば、暴落シナリオが実現する可能性がある。ただし、これは日銀に行動にかかっているので、改めて議論しよう。
実は、暴落は回避されるというのが、ハイブリッド・バブルのもうひとつの、しかもより実現可能性が高いシナリオなのである。これを次回説明する。
次回は5月29日更新予定です。
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