「美術館」を装った不可解なメール

 さて、筆者が行った埴輪の3Dフィギュア化に関して、Xでプチ炎上が起きていると知らせてくれたのは、まさにそのフィギュアを受け取ったことをブログに投稿した親しい知人たちだった。実際には、その知人自体を揶揄する投稿もあり、筆者も同様の目に遭っていないかを心配して知らせてくれたのである。

 幸いなことに、自分のところには直接的な非難などは寄せられていなかったが、その直後に、今度は編集部に警告メールが届くことになる。「平素より貴媒体のご活動を拝見し、深く敬意を表します」と、やけに丁寧な書き出しから始まるそのメールは、以下のように続いていた。ここでは、メールの送信元が、そうは名乗らずに、館の関係者を匂わせる書き方をしていることがわかるように、あえて全文を掲載する。

このたび、貴媒体に掲載された記事「100分でフィギュアが完成!生成AIと3Dプリンタで作る『デジタル民芸品』の世界」につきまして、国立美術館の著作および規約に違反する可能性があることをお伝えいたします。
当該記事の内容には、国立美術館が保有する著作物の無断使用や、同美術館の規約に反する形での二次利用が含まれている可能性がございます。国立美術館では、その収蔵作品やデータの使用に関して厳格なガイドラインを設けており、無断使用は著作権および利用規約の違反となる恐れがございます。
つきましては、記事の内容をご確認のうえ、適切な対応をご検討いただきますようお願い申し上げます。必要に応じて、国立美術館の規約をご参照いただき、関係各所とご相談いただけますと幸いです。

 お気づきの通り、特別展「はにわ」を開催したのは、東京国立「博物」館であり、国立「美術」館ではない。実際の関係者であれば、そのような基本的な誤りをするはずもなく、筆者は冒頭でイタズラメールに近いものだと確信した。

 結びの「関係各所とご相談」という部分もわかりにくい表現であり、適当な要素を並べて稚拙なプロンプトで生成AIにまとめさせた文章のようにも見える。送信元のメールアドレスも、NTTドコモのキャリアメールだったそうだ。

 可能性としては、Xでのプチ炎上の様子を見て親切心から編集部に知らせてきたということもありうるが、いずれにしても内容は的外れなものだ。