
「債券自警団」は最後の砦!?
相互関税上乗せに「ノー」
トランプ関税政策の見直し交渉が始まったが、5月2日に行われた赤沢経済再生相とベッセント財務長官らの2度目の閣僚級交渉も、アメリカ側はすでに発動済みの自動車や鉄鋼・アルミニウムへの関税は協議の対象外にする姿勢を示している。
関税交渉一つを取っても、トランプ政権の無謀な政策をやめさせるのはなかなか容易なことではなさそうだ。
唯一、可能性があるとすれば、債券市場だ。
「債券自警団(Bond Vigilantes)」の活動は、政府や中央銀行が無謀な経済政策を行おうとする場合に、投資家が国債を売却することだ。このため長期金利が上昇し、政府に市場からの「警告」を発することになる。
この言葉は1990年代にアメリカで広まった。当時、アメリカの債務比率は上昇しており、そのため93年に就任したクリントン大統領は、政治的には不人気である増税・支出削減策を実行せざるを得なかった。
最近、この言葉がトランプ政権による政策への批判として、再び注目されることになっている。
トランプ政権が、「相互関税(Reciprocal Tariffs)政策」を発表したが、全ての貿易相手国への一律10%関税以外の、日本などへの上乗せ関税は9日に発動したものの、半日で90日間の実施猶予を設けた。これは債券自警団の警告にトランプ政権が反応した結果だと解釈される。
トランプ大統領のパウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長「更迭」発言が即座に撤回されたのも、債券市場が大きく反応したからだ。
「債券自警団」が、トランプ政策への最後の砦と言っていい。