
習近平国家主席が11回目のロシア訪問
中露がグローバルなレベルで戦略的連携を強化
中国の習近平国家主席が5月7~10日、ロシアを公式訪問した。5月9日がロシアにとって、第2次世界大戦で旧ソビエトがナチス・ドイツに勝利したことを祝う「戦勝記念日」であり、プーチン大統領は、これにあわせて習主席をモスクワに招いたという建て付けである。
「中国民主化研究とは中国共産党研究である」という立場を取り、中国共産党の動向や実態を注意深く観察し、持続的に示唆を汲み取ることが、中国という巨大国家の政治がどこへ進んでいくのかを分析する上で重要だと考えてきた。
その意味で、今回の習主席の訪ロは我々にとって重大な示唆を与えてくれるケーススタディになると判断するため、本稿で取り上げることとする。
今回の訪ロは、習近平氏にとって11回目であり、戦勝記念式典については2回目である経緯がロシアでは大々的に報じられ、「ロシアと中国の関係はかつてないほど良好だ」というロシア側の立場が前面に打ち出された。プーチン大統領と習近平国家主席は、首脳会談、共同記者会見に加え、1対1の「お茶会」も開催された。5月9日の式典でも、両首脳は隣り合わせに座っていた。
今回の訪ロを通じて、両国は「中国人民の抗日戦争勝利、ソ連の偉大な衛国戦争勝利、国際連合設立80周年に際し、中露が新時代に包括的戦略的パートナーシップをより一層深化させる共同声明」「国際法の権威を守るための協力をより一層強化するための共同声明」「グローバル戦略的安定に関する共同声明」という3つの声明を発表した事実は特筆に値する。中国とロシアが国際秩序やルールを形成する上で、戦略レベルで連携し、トランプ政権下で内向きになる米国の覇権を崩していきたいという明確な意図がうかがえる。