
米国で関税インフレの足音
中央銀行を悩ませる不確実性
米国の物価統計は3か月連続でインフレが減速していることを示し、早期利下げ期待を煽っている。トランプ大統領は「インフレはない」と主張し、早期の利下げを改めて求めた。
しかしながら、最近の物価減速は一時的要因の影響が大きい。ガソリン価格の低下に加え、鳥インフルによる卵価格の変動や株価急落による資産運用の手数料下落などが影響した。
筆者は関税インフレの本格化が夏場以降とみているが、その兆しは既に表れ始めている。物価統計を品目別にみると、関税の影響を受け易い品目では価格の前月比伸び率の加速が目立つ。中古車の卸売価格は4月に前年比2%の上昇に転じ、今後数か月で物価統計に反映されていく。
オックスフォード・エコノミクスの5月時点の予測では、コア個人消費支出デフレータは今年の終盤に3.4%まで上昇した後に緩やかに低下に向かう(図表1)。ただ、関税政策を巡る相次ぐ方針転換で、予測は3月、4月、5月と大幅改訂を余儀なくされてきた。
関税政策を巡る高い不確実性が続く下では、米連邦準備制度理事会(FRB)は金利を当面据え置く様子見を余儀なくされ、利下げ開始は12月とみている。FRBが利下げに慎重なのは、関税政策がどうなるかに加え、それが物価にどう波及するかについて不確実性が高いためだ。