competitive authoritarianism:競争的権威主義

「自由の女神」の返還要求、トランプ政権下で米国の民主主義度合いは急低下

 今春、フランス人政治家が米国に対して「自由の女神」の返還を求めたところ、世界的なニュースになった。

 無理もない。19世紀後半にフランスから米国へ贈られた自由の女神は民主主義の象徴であるにもかかわらず、「米国が民主主義の盟主から降りて権威主義(authoritarianism)の仲間入りをするのではないか」といった見方が出ているのだから。

 米国がいきなり権威主義となるわけではない。民主主義体制を採用しながら強権的手法で政敵を排除する「競争的権威主義(competitive authoritarianism)」へ移行しつつあるというのだ。

 原因はトランプ米大統領だ。1月の就任以来、政敵への報復に執念を燃やしてなりふり構わず突っ走り始めている。議会を黙らせる一方で司法への攻撃を強めるなど、三権分立(separation of powers)という民主主義の根幹も揺るがしている。

 民主主義の度合いを100点満点で評価したら、現在の米国はどこに位置するだろうか。米政治学者760人を対象にした調査「ブライト・ライン・ウオッチ」によると、評価は急落中だ。

 第2次トランプ政権発足から100日目の時点で見てみよう。評価は53点であり、昨年11月の米大統領選挙直後の67点から大きく低下。第1次トランプ政権とバイデン政権時代には一度も60点を下回ったことがなかったのに、である。