消費者庁サイトにあった「気になる文章」

 研究に参加した人の数をみても、医学研究の数万、数千という単位からはかけ離れていることがわかります。また、「進級に重要な学術試験を受験する4年次の健常な医学部生の男女」が極めて偏った集団であることは否めません。消費者庁の公式サイトに掲載されたヤクルト1000の試験結果のレビューには、次のように書かれています。

 採用された文献が4報あり、肯定的な内容で一貫性のある結果が得られていることから、科学的根拠の質は十分と判断しました。しかし、研究の限界として出版バイアス(筆者注:否定的な結果が出た研究が公表されにくいこと)の存在が否定できないため、今後さらなるエビデンスの拡充が望まれます。

 社会現象になった健康食品も、実際には、医薬品と比べればはるかに根拠が弱いもの。著名人が紹介しても、SNSで話題でも、それだけで鵜呑みにはしないでほしいのです。

 では、運動、特に筋トレをしている人が飲んでいるイメージのある「プロテイン」はどうなのでしょう。水や牛乳などに溶かして飲む粉末状のたんぱく質です。

 結論から言うと、あれは筋トレ直後の栄養補給をする上では便利なもの。「不足している」とされた栄養素を補う目的に適うと言えます。筋トレをしている人の1日あたりの摂取するべきたんぱく質量(平均値)は一般的に体重1キロあたり1~2グラムとされます。ここから不足しているようであれば、プロテインからたんぱく質を摂取することも、大人であれば“アリ”だと言えるでしょう。

 ちなみに「筋トレ直後の」「便利」としたのには理由があり、食事のみ(安静時)で起きるたんぱく質の合成は短時間で終了してしまうものの、筋トレをすると24時間後まで継続することがわかっています。また、筋トレ後のたんぱく質の摂取は、たんぱく質の合成を大きく高めることも明らかになりました。