言った上司も言われた部下も
疲弊する最悪のひと言

 勤務弁護士に自分の持ち味を発揮できるように育成しつつ、クライアントにも代表弁護士のサービスとは違った持ち味のサービスの良さを実感してもらい、それを受け入れてもらうようにすることが肝要ではないかと思います。

 クライアントにそのようなサービスを受け入れてもらえるようになるまでに、代表弁護士は、勤務弁護士に案件を任せつつ、面倒見良く指導し、時にマイクロマネジメントをし、時に丸投げをしながら、その匙加減を間違わないように見守っていくしかありません。それが勤務弁護士の成長に欠かせないと思います。

 トッププレイヤーでやってこられた経営者の方々は、他人に任せるより、「自分でやったほうがうまくいく。早くできる」と自分でやってしまうことが多いでしょう。

 私自身もそうでした。勤務する弁護士がたくさん増えてきた時期では、全ての案件に目を通し、他の弁護士の仕事に細かく指示を出していました。

 時には、「オレがやるならこれはしない」と厳しく接してしまうこともありました。しかし、弁護士が増えてきて案件数が一定数を超えてくると、そのやり方では業務量が膨大になり、脳疲労を含めた精神的なダメージが大きくなります。

飛行機で隣に座った
上場企業社長の金言

 そうしたところ、2018年の冬頃、飛行機の中で、もともと面識のある上場企業の社長様と近くの席になり、ゆっくりお話しさせていただく機会がありました。

「井上さん、顔が疲れているよ。従業員は会社で集中していればいいけど、社長はそうはいかないでしょ。24時間張りつめていないといけない。だから心が壊れる。緊張を解きほぐす時間がないとメンタルが潰れてしまうよ。

 それから、井上さんは何でも自分でやりたがるでしょ。職員に任せることを増やさないといけないよ。どういったことをどこまで任せるか決めていって、自分で決めることと任せることの線引きをすることだね。

 任せるにあたっては、会社のビジョンに従って仕事をしてもらえばいいんだよ。経営理念の浸透はこういうところで効いてくるんだよ」

 このようなアドバイスを受けました。その他ここに書き切れないお話を聴け、2万2000円の飛行機代が220万円の価値があるように思えました。