私が「予約したいのですが」と電話すると、「お名前は?」と聞かれて、「バラクです」と答えると、彼らは「ああ、バラクさんですね。いつもありがとうございます」と言ってくれます。そして、前回私が何を食べたか、店側は覚えているのです。焼鳥屋さんでは、私が好きな三岳(みたけ)という焼酎を出してくれます。どちらも美味しくて親切で素敵なお店です。

 こういうのは他の国では見られない、レストラン経営のプロフェッショナリズムで、顧客を覚えて「おもてなし」をする。それが、顧客が店をリピートする動機になっている。これも日本のレストラン文化の一部で、素晴らしい点だと思います。

――先ほど、飲食店の人手不足が心配だと言っていましたね。飲食店に限らず、日本では人手不足が原因で倒産する事例が増えています。

 東京のコンビニで働いている人の多くは、もはや日本人ではありません。しかし、彼らに日本国籍取得の道はなく、日本の時給は非常に低い。数年後には、彼らも「日本はもういいや、別の国に行ってお金を稼ごう」と思うようになるでしょう。となると、今の日本は観光ブームのピークか、あるいはもう黄昏時(twilight)かもしれません。人手が足りなければ、衰退していくでしょう。ロボットやAIでは、この問題は解決できないのです。

 そういえば最近、新幹線の車両が分離して危険な状態になった事故がありましたね。点検が不十分だったのか分かりませんが、でも、日本ではそういった今までの強みが崩壊し始めているのではないでしょうか。次世代を支える人口が少ないからかもしれません。

――改めて、日本の食の魅力とは何でしょうか。

 日本の進化と食の進化は目を見張るものがあります。戦前の日本は貧しく、二大疾病は結核と栄養失調で、1930年代の死亡者の平均年齢は48歳でした。それが今や、国際的な食の中心地ですから、日本は本当に変わったのです。

 そもそも、寿司は生魚なので世界中のほとんどの人が好まなかったのに、今では日本食好き=国際的な人だと思われるようになりました。この変化は非常に興味深い。

 日本は食に関する記事や本がたくさんあり、人々は常に食について語っています。日本のテレビは食に関する番組ばかり。他の国とは一線を画すほど、食に執着する国へと変貌を遂げ、ミシュランガイドにも認められました。2000年まではミシュランガイドは日本を無視していましたが、今では多くの店が取り上げられています。