日本の飲食店のシステム化にとても感心したという話を聞きました。カレー屋さんで、券売機でお金を払ってチケットを店員に渡すと、ものすごいスピードでカレーを出してくれたのが、とてもエキサイティングだったと。アメリカにはそういうレストランはないですからね。

 東京は、エスカレーターで左側に立ち、右側を歩く。ところが大阪や京都では逆。そういう文化にも感銘を受けたようです。SuicaなどのICカードを改札にかざしてサッと通れることにも感動していました。イギリスの改札はとても遅くて、しょっちゅう止まってしまいますから。

 私が1992年に初めて日本に来た頃は、役所に行くのも大変でした。が、今はとても親切です。最初に番号をもらうシステムで、改善されました。外国人が増えたので、日本人の外国人に対する態度も変わりました。私が岩手に住んでいた頃は、「ガイジン、ガイジン」と言われましたが、今はそういうことは減りました。

 ただ、今でも残念なことがあります。私がひとりでお店や駅で誰かに日本語で話しかけると、相手は私に話しかけてきますが、日本人の妻が隣に立っていて私が日本語で質問すると、相手は妻に返してきます。他の国ではこのようなことは見られません。もし、このようなことが起きたら、非常に失礼な態度とみなされるでしょう。相手が自分の母国語で話しているのですから。だから、これは日本で変えなければなりません。相手をガイジンではなく、個人として扱うことが重要です。

 また、日本の最大の問題は、女性の扱いだと思います。先進国である日本でトップの職に就いている女性は非常に少なく、この問題についてオープンに議論されることがほとんどありませんでした。私が来日した90年代初頭は、日本のテレビもすごく性差別的でした。状況は改善され、平等になりつつありますが、それでもまだ大きく遅れています。

 ケンブリッジ大学の私のクラスでは、学生の過半数が女性です。ヨーロッパの優れた教育機関には女性が多く、博士号を取得する人、学者になる人も当たり前にいます。ただ、この状況は西洋でも20年かけて変化してきたことです。日本では、その変化がもっとゆっくりです。

――日本で、想定よりもネガティブな印象を持ったことはありますか?