
原油先物は1バレル60ドル台前半に
OPECプラス増産加速で新たな火ダネ!?
原油価格が下落している。代表的な指標であるWTI原油先物価格は足元で1バレル=60ドル台前半と、2025年1月の80ドル台から一段と値を下げている。
先物価格 は、2022年2月のロシアのウクライナ侵攻やその後の欧米や日本の対露制裁による需給逼迫(ひっぱく)などで22年5月には、月間平均価格で同年1月の1バレル=92ドル前後から115ドル近くまで急騰したが、その後は低下基調が続いてきた。
このところの先物価格の一段の下落の背景には、石油輸出国機構(OPEC)とロシアなど非加盟国から構成される「OPECプラス」が増産姿勢に転じたことがある。
トランプ関税による世界経済の成長減速懸念で原油需要に下押し圧力が強まり、石油収入の減少を生産量の拡大で補う思惑が強まっていることや、米国やカナダの増産で世界の原油生産におけるOPECプラスのシェアが低下してきたなかで、生産拡大で原油市場への影響力を再び強めるなどの狙いがある。
今後も、増産のペースは加速するとみられ、1970年代の石油ショックとは逆に原油価格が急落する「逆オイルショック」も現実味を増す状況だ。
日本経済には原油価格の下落はプラスの効果が期待できるが、産油国の財政や経済悪化による国際金融市場の不安定化や中東の地政学リスク増大など、逆オイルショックは新たな火ダネを生むことになりかねない。