
外食大手で主力の牛丼チェーン「すき家」を展開するゼンショーホールディングスと、「吉野家」を抱える吉野家ホールディングスは、2025年度以降の成長をそろって海外事業に求める方針だ。その方針を反映して、両社は定時株主総会後に海外事業で経験豊富な新社長が就任する。特集『激動!決算2025』の本稿では、その背景と、足元の国内では一朝一夕には解決できない2つの重い課題を解説する。(ダイヤモンド編集部 片田江康男、大日結貴)
コロナ禍の危機から立ち直り
アクセル“ベタ踏み”の牛丼2社
牛丼の「すき家」や回転寿司の「はま寿司」などを展開するゼンショーホールディングス(HD)と、牛丼の「吉野家」や「はなまるうどん」などを運営する吉野家ホールディングス(HD)。両社は新型コロナウイルス禍の危機を抜け、業容拡大へアクセルを力強く踏み込んでいる。
ゼンショーHDは2025年3月期、連結売上高1兆1366億円(前期比17.7%増)、純利益は392億円(同28%増)となり、最高益を更新。外食企業として、初の連結売上高1兆円超えを達成した。
吉野家HDは最高益更新とはならなかったものの、25年2月期は連結売上高2049億円(前期比9.3%増)、純利益38億円(同32.1%減)を達成。コロナ禍で75億円の最終赤字に陥った危機から立ち直った。
そんな牛丼2社はそろって、25年度以降の成長を海外に求める計画を掲げている。とりわけゼンショーHDは強気だ。
ゼンショーHDは25年度から始まった中期経営計画の主要テーマに「グローバルな店舗展開の加速」「グローバルMMDの深化」(編集部注:MMDはマス・マーチャンダイジング)を掲げ、28年3月期までの3期で、海外の外食売上高を25年3月期比37.4%増の4157億円まで拡大させる目標をぶち上げた。海外での出店数は、26年3月期から毎年1000店規模のペースを維持。28年3月期の国内外の外食店舗数1万8529店のうち、海外店舗は1万3362店と全体の72%まで高める腹積もりだ。
吉野家HDもラーメン事業や国内での成功業態の海外展開で、29年度までの5期で同11.5%増の310億円まで伸ばす目標だ。5年間でM&A(企業の合併・買収)などに400億円を注ぎ込むが、そのほとんどが国内外におけるラーメン事業への投資で、事業規模を5倍まで拡大させるという。
そこで注目したいのが、両社の海外重視のキーパーソンとなる2人の新社長だ。定時株主総会後にゼンショーHDは創業者で現代表取締役会長兼社長兼CEO(最高経営責任者)の小川賢太郎氏の次男で副社長の小川洋平氏が、吉野家HDは成瀬哲也取締役が社長に正式に就任する。両新社長は海外子会社の社長などを歴任した、社内きっての海外畑人材だ。
しかし、両社は海外事業拡大のアクセルを踏み込んでばかりはいられない状況にある。次ページで両新社長の経歴を詳しく紹介するとともに、急浮上している重い2つの課題について解説する。