激動!決算2025Photo:PIXTA

百貨店主要4社の2024年度決算はそろって過去最高益を更新。訪日観光客の旺盛なインバウンド需要を取り込み、コロナ禍で苦しんだ4年前から、劇的な復活を遂げた。だが足下では業績を腰折れさせる新たなリスク要因が浮上している。特集『激動!決算2025』の本稿では、空前の好決算となった百貨店主要4社を取り上げる。(ダイヤモンド編集部副編集長 片田江康男)

百貨店が“小売り王者”としてカムバック
主要4社がそろって過去最高益更新

 あまたある小売り業態の中でも、長らく構造不況業種として認識されてきた百貨店。2000年以降、そごうグループや地方百貨店の破綻・閉店が相次いでいた。そこへ新型コロナウイルス禍が重なり、生活必需品をメインで扱うわけではない百貨店の来店客数は激減。各社の20年4月から5月の月次売上高は、軒並み前年比80~90%減となるなど、大きなダメージを受けた。

 そんな惨禍を乗り越えて迎えた百貨店主要4社の25年3月期決算は、そろって過去最高益を更新した。歴史と伝統、ブランド力において他の小売り業態を寄せ付けなかった“小売業の王者”百貨店が、華々しいカムバックを飾った。

 要因は国内の景気回復と円安による爆発的なインバウンド需要だ。三越伊勢丹ホールディングス(HD)の免税売上高は、新型コロナ禍前の18年度に755億円だったが、24年度は約2.3倍の1700億円に到達。旗艦店である伊勢丹新宿本店では、年間売上高に占める免税売上高は約18%にまで拡大した。

 しかし、最高益を実現させた要因はこれだけではない。UBS証券の風早隆弘シニアアナリストは、「国内の小売業において最大の課題であるオーバーストアを、他の小売り業態に先駆けて解消できたことが大きい」と指摘する。

 下のグラフは国内の百貨店売上高と店舗数の推移だ。百貨店各社は10年前から地道に閉店を続け、24年は14年比62店舗減の178店まで減少している。その一方で、訪日観光客によるインバウンド需要を取り込み、24年の全百貨店売上高は5兆7722億円を確保した。

 景気回復とインバウンド需要、積年の課題であるオーバーストア解消という3つの要素が重なった24年度に、最高益をたたき出したのは、何ら不思議ではなかったといえる。

 もっとも、この好況が今後も続くほど甘くはなさそうだ。25年度以降、これまで百貨店ではそれほど大きくなかったリスクが浮上しているのだ。次ページで詳しく解説していく。