ただ、実はこの「裏切り」には伏線がある。今から1年前、2024年5月19日の社説でもこんな感じのことを言っている。
「皇室を維持できなくなるような事態に備え、少なくとも皇族女子の子を皇族とすることは選択肢としてあり得よう」
つまり、読売新聞としては今回の「提言」は唐突に心変わりをしたわけではなく、昨年から徐々に匂わせるなど入念に下準備してきた可能性が高いのだ。
「なお悪いわ!こうやって日和る連中のせいで日本が危機に晒されているのだ」という保守の皆さんのお怒りは痛いほどわかる。
ただ、一方で読売がこういうスタンスになってしまうのも、いたしかたがない気もする。今の「男系天皇護持」のロジックは「天皇」という存在を「日本国民の統合のシンボル」としか見ていない一般庶民には、ぶっちゃけあまりピンとこないからだ。
女系天皇の検討さえ認められないという人々は、「戦後、皇籍を剥奪された旧宮家の男子を“養子”という形で皇室に戻せるように法改正すればいい」ということを主張している。
これは「ヒゲの殿下」として愛された寛仁親王も在りし日におっしゃっていたことだ。
「継体天皇、後花園天皇、それから光格天皇のお三方は、それぞれ十親等、八親等、七親等という、もはや親戚とは言えないような遠い傍系から天皇となられています。(中略)宇多天皇という方は一度、臣籍降下なさって、臣下でいらっしゃった間にお子様も儲けられているのに、その後、皇室に適格者がいなくなったのか、皇族に復帰されて、皇太子になられ、天皇に即位されています。お子様も一緒に皇族になられて、その後、醍醐天皇になられています」(文藝春秋 2006年2月号)
このようなお話を聞くと納得される人もいるだろうが、「血統」というものにこだわることのない一般庶民の多くは、「そんな親戚でもないような遠縁の人よりも、天皇陛下と家族の愛子さまとか、姪の小室眞子さんの子どもとかのほうがいいんじゃない?」と思ってしまうのだ。