
6月27日に開催が予定されるnmsホールディングスの株主総会を前に、新旧経営陣が委任状争奪戦を繰り広げている。発端は大株主で前社長の小野文明氏が7年間に使った635万円の経費私的流用疑惑にあるが、PwCリスクアドバイザリーが補助を務めた特別調査委員会の費用は2億3300万円に上る。実はこの費用の大部分が、流用疑惑の調査とは関係のない名目で請求されていることが取材で分かった。(フリーライター 村上 力)
前社長と経営陣が対立
鍵を握る「不正調査」の実態とは?
東京証券取引所スタンダード市場に上場し、1万人の製造人員を擁する製造業向け派遣・請負のnmsホールディングス(HD)で、大株主の小野文明前社長と現経営陣が紛争状態に陥っている。
同社では昨年10月に小野氏の経費私的流用疑惑を調べる特別調査委員会が設置され、報告書が12月に公表されると同時に小野氏が代表権を返上。ナンバー2の河野寿子氏が社長に就任した。
ところが今年に入り、小野氏が現経営陣の解任を求める臨時株主総会を請求するなど対立が激化。6月27日開催予定の定時株主総会で小野氏が新たな取締役選任を求める株主提案を行い、委任状争奪戦(プロキシーファイト)を繰り広げている。
小野氏はダイヤモンド編集部のインタビューで不正な横領はないと主張(『nmsホールディングスを私的流用疑惑で追放された前社長が「現経営陣反対」の株主提案!製造業向けサービス大手で何が起きたのか』参照)。その一方で経営陣は、調査委員会が経費不正を認定したと主張し、対立を深めたまま株主総会に突入する。
一連の紛争で際立つのが、社外取締役らで構成された特別調査委の存在だ。小野氏の経費私的流用疑義の金額は7年間で合計635万円。それに対して、2億3300万円もの調査費用がかかっているのだ。経費を調査すること自体に問題はないが、対象金額に対して割に合わない費用がかかっている違和感を禁じ得ない。
なぜここまで調査費用が膨れ上がったのか。むろん一般的な不正調査では、端緒となる疑義から調査対象が拡大することもある。nmsHDの特別調査委でも、経費にとどまらず小野氏のパワハラ疑惑などを調査した形跡がある。
だが実は、2億3300万円のうちの大部分が、報告書には記されていない別の名目で請求されていることが分かった。PwC Japanグループでフォレンジック調査を担うPwCリスクアドバイザリーも関わった調査の実態を次ページで明らかにする。