「全社員に買って配りました」
「入社する人への課題図書にしています」

そんな声が多数寄せられているのが、書籍『ベンチャーの作法 -「結果がすべて」の世界で速さと成果を両取りする仕事術』です。1.1万人以上のキャリア相談、4000社以上の採用支援の経験がある高野秀敏さんが、ベンチャー流の「結果を出す働き方」をまとめました。
シーリングライト一体型プロジェクター「popIn Aladdin」や、世界的ヒットとなった「スイカゲーム」の開発者であり、現在はヘルスケアベンチャーに挑む起業家・程涛さんも、本書に共感した読者のひとり。同氏からお聞きしたベンチャー企業のリアルや、『ベンチャーの作法』からの気づきを、数回の記事に分けて紹介します(ダイヤモンド社書籍編集局)。

優秀な人が“仕事で悩んだとき”にこっそりやっている、意外な行動・ベスト1Photo: Adobe Stock

「社長を動かす」ことに、遠慮しなくていい

――『ベンチャーの作法』を読んで、「社員にもっとこうしてほしい」と感じた部分はありましたか?

 はい、とくに印象に残ったのが、本の中で触れられていた「ボスを動かすスキル」の話です。

 自分のミッションを達成しようとしたときに、自分の能力やリソースだけでは足りない場合って、当然あるわけです。そうなったとき、いかに“上司を巻き込むか”が本当に重要なスキルだと思っています。

 社員からすると「社長を動かす」って、なかなか気が引けるものかもしれません。でも、それが間違いです。
 うちは社員15人しかいないですから、困ったらなんでもすぐに僕に相談してほしい。

 そうすれば良いアイデアが思いつくかもしれないし、もっといい方法が見つかるかもしれない。そういう機会を逃してしまうのは、すごくもったいないなと思っていて。

 もっと皆が僕のことを“うまく使いこなせる”ようになってくれると嬉しいですね。

“あとから”より“最初に”相談すべき理由

――ボスの側からしても、「動かしてほしい」と思っているんですね。

 そうなんです。そもそも、すべてが順調な状態なんてベンチャーではまずありません。新しいことをやるのって、トラブルがあるのが前提ですから。

 だからこそ、“あとから”じゃなくて“最初に”相談してほしいんですよ。

 たとえば大事な商談があるとき。事前に「こういう提案をしようと思ってます」と僕に相談してくれたら、一緒にアイデアを練って、もっと良い提案ができる可能性があります。

 でも、商談が終わってから「うまくいきませんでした」と言われても、もう一度商談の場をつくるには時間もかかるし、そもそも再度アポが取れるかもわかりません。

 結果的に、相談しなかったことが大きな機会損失につながるんですよね。

社長を「巻き込む」ことが、自分の成長につながる

 だから僕としては、どんどん「社長を使ってくれ」と思っています。
 
もちろん、僕も忙しくはあります。でも、時間がゼロってことはない。必要とあらば必ず対応します。

 正直、今の段階でメンバーが自分の担当業務において“完全なプロ”になれているかというと、まだ道半ばです。だからこそ社長である僕を活用して、自分の仮説を確かめたり、次の一手を一緒に考えたりしてほしいんです。

 そうやって「ボスを動かすスキル」を身につけることが、結果として自分の成長にも、仕事の成果にも直結すると思っています。

 社長を“使える人”って、やっぱり結果を出せる人なんですよ。

優秀な人が“仕事で悩んだとき”にこっそりやっている、意外な行動・ベスト1程涛(てい・とう)
issin代表取締役CEO
2008年、東京大学大学院情報理工学系研究科創造情報学専攻の修士課程在学中に、研究成果のpopIn(ポップイン)インターフェースを元に、東大のベンチャー向け投資ファンドの支援を受けて、popInを創業。2015年に中国検索大手のBaiduと経営統合、2017年に世界初の照明一体型3in1プロジェクター popIn Aladdin(ポップイン アラジン)を開発し、異例のヒット商品となった。2021年issinを創業、スマートバスマットを商品化。2022年、popIn代表を退任。

(本稿は、書籍『ベンチャーの作法』に関連した書き下ろしです。書籍では「なにがあっても結果を出す人の働き方」を多数紹介しています。)