
塾業界30年以上のベテランであり、神奈川県の中学受験国語塾「中学受験PREX」の渋田隆之塾長と、洗足学園中学高等学校の玉木大輔先生(校務主任・国語科)が対談。前後編の後編では進学実績の背景にあるリベラルアーツや学力以外に重視している教育ポイントを聞いた。(国語専門塾の中学受験PREX代表、教育コンサルタント・学習アドバイザー 渋田隆之、構成/ライター 奥田由意)
東大合格者が28人
「揺さぶり」をかけ「惑わせ」るキャリア教育の結果
渋田隆之塾長(以下、渋田) 前回も話題にしましたが、2024年度は東大合格者が28人で過去最高を記録されました。帰国生も一定数いますね。
玉木大輔先生(以下、玉木) 帰国生は一学年約250人中17~18%、約40人程度です。入学後は英語だけ帰国生向けの別の授業ですが、ほかの授業は区分けしません。その中で昨年度は8人が東大に進学しています。
前回もお話したように、東大コースのようなものをつくって集中的に勉強させているわけでは全くありません。帰国生も含め、進路は彼女たちが6年間の中で選択肢をめいっぱい広げて考えた末、あくまで高3で出した結論です。
中1で東大に進学すると決め打ちで入ってくる生徒はまずおらず、たとえそういう意志を持って入学したとしても、「揺さぶり」をかけ「惑わせ」ます。
渋田 選択肢を一度広げておくという「奥行き」が大学入学後や、社会に出てからの伸びにつながりますね。その揺さぶりは具体的にどうかけるのですか。
玉木 医師志望の子には「医師はすばらしい職業だけれど、他の職業を見なくて本当にいいの」、志望大学をすでに決めている子には「本当にその大学でいいの」と問う。
高1のときに、進路についての三者面談をして、そこでは生徒が保護者と教員相手にプレゼンをする。理系に行きたいと言うなら、それに対して「なぜ行きたいの」「どういうところがいいと思っているの」「文系ではだめなの」などと、保護者と教員が徹底的に突っ込むことで、健全な批判的議論をするんです。
渋田 選択肢を広げる、迷わせるということに関して、洗足は徹底していますよね。
玉木 面談も含め、哲学対話、キャリア教育、模擬国連や学外のコンクールなどへの積極参加を促す「他流試合」など生徒がいろいろやってみた結果、納得したうえでの進路を選択してほしいですからね。