政府の肝いりで設立された出版デジタル機構が、電子出版の取次大手ビットウェイを買収しました。それを大きく報道した5月30日の日経の記事を読むと、電子出版の普及に向けた前向きな動きのように見えますが、事実は正反対ではないでしょうか。

電子出版のビジネスの実態

 結論から先に言えば、今回の出版デジタル機構によるビットウェイの買収は、多額の公的資金など政府の過剰支援によるJAL再生が航空産業の競争条件を歪め、それによって民間企業として自力で頑張っているANAが競争上不利な立場に置かれている状態と同じ悪影響を生じさせます。

 即ち、公的資金による民業の圧迫という、JALと同じ失敗が繰り返されようとしているのです。その背景にあるのは、政府の所管官庁、官民ファンドの産業革新機構、そして公的資金の出資を受けている出版デジタル機構という三者による、公的支援という制約条件を無視したモラルハザードに他なりません。

 その部分をご理解いただくためにも、まず電子出版のビジネスの流れを復習すると、図のようになります。

 まず、出版社から電子書店に電子書籍が渡るルートとしては、直取引と取次経由という2種類が存在します。ちなみに、直取引と取次経由の割合は7:3くらいになると思います。

 次に、電子書籍の取次は、既にビットウェイをはじめ多くの民間企業が参入してビジネスを展開しています。つまり、出版社や電子書店と同様に、電子書籍の取次は純粋に民業の世界となっているのです。ちなみに、その中でビットウェイのシェアがだいたい5割くらいで、残りのシェアを多くの企業で分け合っている感じです。