「早死に」する人が睡眠時に“していること”【神経学会が衝撃の発表】写真はイメージです Photo:PIXTA

悪夢は早期死亡リスクを高める

 悪夢に関しては、「死ぬほど怖い」という表現が当てはまる可能性があるようだ。悪夢を頻繁に見る人は生物学的年齢が進んでおり、早死にするリスクが約3倍高まることが、新たな研究で明らかにされた。

 この研究結果は、英インペリアル・カレッジ・ロンドン(UCL)の神経科学者であるAbidemi Otaiku氏により、欧州神経学会(EAN 2025、6月21〜24日、フィンランド・ヘルシンキ)で発表された。

 Otaiku氏は、「睡眠中の脳は夢と現実を区別することができない。それゆえ、悪夢を見て目が覚めたときにはたいていの場合、汗をかいて息を切らし、心臓がドキドキしている。これは、闘争・逃走反応が引き起こされているからだ。このストレス反応は、起きている間に経験するどんなことよりも激しい場合がある」と同氏は話す。

 この研究では、4つのコホート研究(26〜74歳の4196人が対象)のデータを用いて、悪夢を見る頻度と早期死亡(75歳未満での死亡)および生物学的年齢との関連が検討された。

 悪夢の頻度は、対象者が試験開始時に自己報告していた。対象者の生物学的年齢は、3種類のエピジェネティッククロック(DunedinPACE、GrimAge、PhenoAge)を組み合わせた指標により、研究開始時に評価された。エピジェネティッククロックは、DNAのメチル化パターンに基づいて生物学的年齢を推定する指標である。

 18年間の追跡期間中に227件の早期死亡が発生していた。解析からは、悪夢を見る頻度が高いほど早期死亡のリスクが有意に高くなることが示された。

 試験開始時に悪夢を見ないと報告した群と比較して、悪夢を週に1回以上見ると報告した群では早期死亡リスクが約3倍高かった(調整ハザード比2.73、P<0.001)。また、悪夢を見る頻度が高い群では、生物学的加齢が加速していることも明らかになった。さらに、媒介分析からは、生物学的加齢の加速は悪夢の頻度と早期死亡との関連の39%を媒介していることも示された。