
金融政策正常化に立ちはだかる
トランプ関税の“二つのシナリオ”
トランプ政権が発動した相互関税などの影響で経済・金融の不確実性が高まっていた4月30日~5月1日に開いた金融政策決定会合で、日本銀行は、政策金利の据え置きなどで金融政策の現状維持を決めた。
この決定に対する評価は、会合後の総裁記者会見での質問にも表れていたようにあまり芳しくない。
批判は二つの方向から出てきた。まず、トランプ関税の影響を軽く見すぎているというものだ。日本経済はこれから大変なことになるのだから、金融政策正常化のための利上げという基本方針を放棄して、利下げの必要性すら考えるべきだという批判だ。
一方で、ここで利上げを停止してしまうと金融政策正常化の道筋は途絶えてしまう。円安も進んで、2%の物価安定の目標を超える物価上昇が続いているのだから、利上げを進めるべきだったのではという、逆方向からの疑問も出た。
どちらの批判も一理あるが、利下げ、利上げいずれも、その道を選べば日銀としては金融政策の正常化が「万事休す」となる可能性があった。
今回の決定は目先の利上げにこだわらない一方で、いつでも利上げが再開できるよう正常化の道を残す道を選んだものだ。