
7月22日、関西電力は福井県にある同社美浜発電所でのリプレース(建て替え)に向けた自主的な調査の再開を発表し、大きな話題を呼んでいる。一方、同社はそれより半年ほどさかのぼった今年1月末、同社の原子力事業本部で初となる女性役員の就任を公表した。長期連載『エネルギー動乱』の本稿では、この前例のない人事で注目を集めている野地小百合執行役常務・原子力事業本部長代理に、原子力部門における多様性の推進と組織変革への挑戦を伺った。(聞き手/アクセンチュア ビジネスコンサルティング本部マネジング・ディレクター 巽 直樹)
原子力事業本部の主要な役割
女性役員が担うのは関電初
――関西電力において女性役員が原子力事業本部の主要な役割を担う初めてのケースであり、多様性推進という観点からも注目すべき人事です。会社から期待されていることや、それに対してご自身がどのように捉えておられるのかを伺えないでしょうか。
前職の組織風土改革室長の就任から約2年で異動したこと、さらに異動先が原子力事業本部ということで、大きな驚きとともに会社から何を期待されているのだろうかと少し戸惑いました。しかし、原子力事業に精通したプロ集団の中に、私のような「素人の、いわゆる原子力に関する専門的な知識を持っていない人の感覚」も必要なのだと、今では理解しています。
着任後、想像していたよりも外からの意見を素直に聞く姿勢に、良い意味での驚きはありました。しかし、女性比率が他部門と比べて低いため、女性の感覚を取り入れることがもともと難しい組織です。
そのため、外部の意識を原子力事業本部に伝え、多様性の観点から、これまでにはなかった感覚を吹き込むこと。そして、自身の社外ネットワーク、特に女性が中心的に活躍しているネットワークを通じてエネルギー事業の魅力を発信すること。大きくはこの二つの役割を期待されていると考えています。
後者については、大阪商工会議所の大阪サクヤヒメ賞を、かんでんCSフォーラム社長時代の2017年に受賞した関係で歴代受賞者のネットワークがあり、また、それとは別に関西経済連合会や関西経済同友会でも女性役職者の集まりがあるので、できるだけ参加しています。皆さん、エネルギーのことにも関心が高いため、こうした方々を対象に発電所見学会なども企画したいと考えています。
――2025年4月1日付で執行役常務に昇任、原子力事業本部長代理として着任され、間もなく半年が過ぎようとしています。現在の取り組みの概要を伺えないでしょうか。また、組織風土改革室長としてのご経験も踏まえ、本部内での新たな課題の発見や、その対応策などをどのように考えておられるでしょうか。