エネルギー動乱Photo:PIXTA

三菱商事、シーテック(中部電力子会社)などのコンソーシアムが、2021年末に落札した国内洋上風力第1ラウンドの3海域から撤退を表明し、国や業界に激震が走った。JERA、ENEOSリニューアブル・エナジー、三井物産、住友商事、丸紅といった第2、第3ラウンドの勝者たちへの影響は。長期連載『エネルギー動乱』の本稿では、電力業界に詳しいKPMG FAS執行役員パートナーの鵜飼成典氏に聞いた。(ダイヤモンド編集部 土本匡孝)

第2ラウンドの勝者も
採算面では厳しい状況?

――三菱商事などのコンソーシアムが、国の公募第1ラウンドで応札した秋田県沖など3海域の洋上風力開発から撤退を表明しました。

 以前から撤退を危惧する報道や減損の発表もあったので、程度は不明ながら何らかの形で決着するのだろうという予測はありました。とはいえ、今回の撤退は、いろんなことを抜本的に検討し直さないといけない契機になるという意味でインパクトは大きいと思います。

 第2、第3ラウンドの落札者も、インフレの影響は大きく受けていることから、数珠つなぎ的に撤退が起こるのではないかという懸念があり、そうならないよう関係者が尽力されていくのだろうと思います。

――海域占用期間延長や価格調整スキーム(建設期間における資材価格などのコスト上昇分を40%程度までFIP基準価格に転嫁するスキーム)など、国の議論ではインフレに対応した支援策が出ています。まだ不十分なのでしょうか。

 占用期間の延長は意味のある変更ですが、プラスアルファされる期間はずっと将来のことで、ファイナンスの観点で見た時、現在価値ベースでは相当インパクトが小さいのも事実。大きく事業価値が上がるかというと、そうはならない。価格調整は収益面で相当にインパクトがありますが、それでも足りないということが事業者によってはあるかもしれません。

 公募で勝たないと何も始まらないのが日本の仕組みですから、第2ラウンド以降も相当程度各社でつっこんだ価格を前提とした入札が実施され、収益性の観点では過酷な競争だったはずです。

――第2ラウンドの事業者の方が、第3ラウンドの事業者より、インフレの影響は深刻なのでは。