半年前、火力発電システム事業の統合を発表した三菱重工業と日立製作所。だが、4月26日に最終契約締結の延期を表明、次のめどと目された5月末も過ぎた。その裏では驚愕の事態が進行していた。
鋼鉄で造られた長さ60センチメートルの1枚の羽根──。それが“世紀の事業統合”による世界2強追撃のシナリオに、思わぬ暗い影を落としている。
4月中旬、この羽根にまつわるトラブルをめぐって、日立製作所の中西宏明社長は、中部電力の本店ビルを訪問。三田敏雄会長と水野明久社長の2人とのトップ会談に臨んだ。
トラブルの舞台は新潟県上越市。日立が、最新鋭の液化天然ガス(LNG)火力発電システムを納入した、中部電力の上越火力発電所だ。4月9日、その1-1号機で、主要発電機器の一つである日立製蒸気タービンの羽根が吹き飛び、発電所の運転停止を余儀なくされたのである。
2012年末に発表した、三菱重工業との火力発電システムの事業統合。その最終契約締結の目標と定めた、4月下旬が迫る中で日立が起こしたトラブルであり、競合他社や関係の深い電力業界の関係者は、その成り行きをひそかに注目していた。
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そうした状況の中、中西社長が直々に中部電力に足を運んだその席では、「トラブルの原因を解明するために、三菱重工へ協力を要請する話にまで議論は及んだ」と、2社の事業統合に詳しい関係者は明かす。
その上、上越火力発電所の運転データを三菱重工に渡すという、具体的な内容にまで踏み込んだ話し合いが行われたというのだ。
「統合新会社を設立予定の14年1月以降は、ファイヤーウォールで情報を遮断することなくトラブルの対応に当たれるようになる」(別の事業統合関係者)。こんな緩やかな共通認識が3社間では出来上がっている。